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研究成果

本研究は,創造的な発展が期待できる日本として推進することが必要な研究分野として,人文社会科学と自然科学を連携するメタレベル知識ベースシステムの実現により,創造的・革新的・学際的学問領域を創造するためのシステム環境の構築を目的としている.

研究成果の概要

本研究では,人文社会科学と自然科学分野の情報源の連結による新しい研究,学問領域の創造を実現するメタレベル知識ベースシステムの構築を推進している.また,本研究では,メタレベル知識ベースシステム上において,人文社会科学と自然科学の分野に関する既存データベース群を連結することにより,人文社会科学と自然科学分野を融合した新たな研究,学問領域の創造を実現するメタレベル知識ベース環境の構築を推進した.メタレベル知識ベースシステムの概念図を図1に,構築したシステムの構成図を図2に示す.

[図1:メタレベル知識ベースシステムの概念図]
図1:メタレベル知識ベースシステムの概念図

[図2:システム構成図]
図2:システム構成図

平成13年度
「メタレベル知識ベースシステムの機能群およびシステム・アーキテクチャの設計,構築」

本研究では,平成13年度において,”メタレベル知識ベースシステム”の機能群およびシステム・アーキテクチャの基本設計,問い合わせ言語設計,メタデータベース意味的連想検索空間設計,および,システムの構築を行った.システム構成図を図2に示す.具体的には,人文社会科学と自然科学の情報源を独立に有する異種データベース群を連結し,それらの情報源を融合するための情報の検索,抽出,編集,統合機能群(1),および,それらの機能群を実現するシステムの基本設計および実装を行った.また,それらの機能を利用するための問い合わせ言語設計を行い,メタレベル知識ベースシステムからデータベース群への問い合わせ発行機能(2),ローカルデータベース群から収集されたデータ群を対象とした時間的,空間的,意味的な検索,統合機能を実現する基本アルゴリズムの設計および基本演算群(3)の設計・実現を行った.さらに,人文社会科学,自然科学分野の既存データベース群を対象とし,本研究のベースとなっている”意味の数学モデル”によるデータ検索,データ統合を行うメタデータベース意味的連想検索空間(意味空間:意味的関係を計量する多次元ベクトル空間)の実現を目的として,環境分野意味空間(4),医療分野意味空間(5),エネルギー分野意味空間(6),生活環境分野意味空間(7)の設計,構築を行った,さらに,実験システムによって,それらの機能群,基本アルゴリズム,メタデータベース意味的連想検索空間の実現可能性,および,有効性を確認した.

平成14年度
「異種データベース群のメタレベル知識ベースシステムの連結による知識情報獲得を実現する言語体系の設計,構築」

平成14年度において,自然科学系,人文社会科学の具体的な情報源として,医学分野(8),および,国際関係分野(9)を対象とし,意味の数学モデルによるメタデータベース意味的連想検索空間の設計・構築を行った.また,それらの学術分野のメタデータベース意味的連想検索空間をメタレベル知識ベースシステムに連結し,メタレベル知識ベースシステムにおいて実現した機能群により検索,編集,統合し,学際領域の知識情報を発信するためのメタデータベース言語処理系(10)の構築を行った.

さらに,本研究では,発展的,独創的な研究として,異分野データベース群を対象とした新しい意味的検索空間統合方式(11)を考案し,その方式設計・構築を行った.(図3,図4)

[図3:複数意味空間の統合プロセス]
図3:複数意味空間の統合プロセス

[図4:ベクトル要素の合成方法]
図4:ベクトル要素の合成方法

この方式は,独立に構築されたメタデータベース意味的連想検索空間群を1意味的連想検索空間へ統合する方式であり,この方式により,連携の対象とする異分野間を統合した視点からの意味的な検索が可能となる.本方式を意味的連想検索に適用する際の実現方法を示し,環境分野および医療分野を対象とした意味的検索空間統合の実現および実験により,本方式の有効性を確認した.また,”因果関係計量を行う意味的連想検索方式” (12)を考案し,その方式を実現するシステムを構築した.本方式により,概念間,オブジェクト間の因果関係を計量する意味的連想検索空間の構成方式を提案し,その実用性を示した.

また,本研究のメタレベル知識ベースの利用環境として,多様な言語により,多種の言語によって記述された情報源およびメタデータ群の意味的連想検索を実現する多種言語(multiple languages)問い合わせシステム(13)を設計・構築した.具体的には,英語,日本語間の単語レベルの相互変換機構を実現し,英語あるいは日本語の問い合わせから,日本語あるいは英語の情報源を意味的検索可能とするシステムの設計・構築を行った.

さらに,画像データ,音楽データなどのメディア・データを有するマルチメディアデータベースを対象とし,直接検索系の内容検索エンジンを用いることにより,それらのメディアデータに対応するメタデータを自動的に生成するメタデータ自動生成方式(14)を設計・実現した.この方式により,メタデータを自コンテンツ内に含まないメディアデータを対象としたメタデータの自動生成の実現を可能とした.

平成15年度
「研究,学問領域創造のためのヒューマン・インターフェース環境の設計,構築」

平成15年度において,平成13年度および平成14年度に構築した''メタレベル知識ベースシステム''および言語体系を用いて,新たな研究領域,学問領域を創造するためのシステム利用環境の設計および構築を行った.具体的には,WWWを中心とした計算機ネットワーク環境において,メタレベル知識ベースシステムを対象とし,利用者が,知識創造,新領域創造を可視的に行うためのヒューマン・インタフェース機構(15)の設計・構築を行った.また,システム利用の拡大を可能とする多言語利用機構(16)の設計・実現を行った.

具体的なデータベースとして,医療分野データベース,国際関係データベース,教育データベースの構築,拡張を行ない,それらのデータベース群を対象とした時間的,空間的,意味的データベース統合機構の適用に関する実証的実験を行ない,本システムにおけるデータベース統合方式の有効性を明らかにした.

また,データ間の因果関係計量を実現する新しい意味的連想検索方式(17)を示し,その機構の実現を行った.さらに,新しいシステム利用環境として,データ間の意味的相関の強さを詳細に分析するための意味スペクトル分析技術(18)を示し,その実現を行った.それらのシステム利用環境およびシステム機能群を本研究の対象であるメタレベル知識ベースシステムの主要機能群として連結し,それらを統合的に利用するシステム環境を構築し,システム実験を行ない,本研究の実現可能性,先進性,有効性を確認した.

平成16年度
「知識発見機能,学習機能の設計,構築」

平成16年度,本研究においては,前年度までに構築したメタレベル知識ベースシステムの基本機能群を対象として,それらの上位機能として,メタデータベースに内在する知識を抽出する知識獲得機構(19)の設計,構築を行った.また,情報獲得における利用者間の個人差を吸収し,各利用者毎に適切な情報獲得を実現するための知識を蓄積する学習機構(20)の設計,構築を行った.

異なる分野のデータベース群を対象として,意味的な相関の強さにしたがってデータ群に対する分類を行い,それらを対象とした集合演算による知識獲得を行う機構,および,情報獲得における利用者間の個人差を吸収し,また,情報獲得のための知識を蓄積していくための学習機構の設計および実現を行い,その学習機構をメタレベル知識ベースシステムの機能群と連結して使用する学習環境を実現した.

さらに,メタレベル知識ベースシステムの意味検索の結果として表示される情報を対象として,意味検索利用者によって提出された検索対象メタデータの修正指示を利用者毎に個別に格納し,個人の特性に合致した情報獲得を可能とする学習機構を設計・開発し,そのシステム上において実証実験を行った.

平成17年度
「システムの有効性に関する評価」

平成17年度,本研究では,平成16年度までに実現したメタレベル知識ベースシステムが,実際の学問領域において,異なる学問分野間に跨る研究活動に有効に利用,応用されることを検証し,本システムの主要機能群,特に,意味的連想検索機能,知識発見機能,学習機能が,研究活動において実際に創造的なシステム機能として利用可能であることを検証するために,本システムの実際の利用,応用時における有効性に関する評価実験,実証実験を行い,本システムの本格的な利用,応用環境の実現を行った.

応用例として,[1]医学分野(呼吸器分野,感染症分野),[2]国際関係分野,[3]音楽分野,[4] 画像を対象とした感性検索分野,[5]教育・職業データベース連携による個人キャリア開発分野の5分野の研究活動における本システムの有効性を実証実験によって検証した.それらの分野の研究者を対象として,本システムによる知識獲得,知識統合,知識発見による知的創造活動の実験を行い,異なる学問分野間の情報源を連携することによる創造的研究活動を支援する機能としての本システムの実現可能性,有効性を明らかにした.

さらに,本システムの今後の活用を促進するために,本システムの本格的な利用,応用環境として,それらの分野を対象としたWWW上からのシステム利用インタフェースの実現を行った.それらの実証実験,および,本システムの利用環境の構築により,今後,本システムを様々な応用において利用するための環境を実現した.

分担者との連携

本研究では,次に示すシステム構築,知識ベース構築に関する重要項目について,各研究分担者との共同構築によって実現した.

  1. 医療分野を対象とした意味空間作成・統合(相磯貞和研究分担者との共同構築によって実現:医療分野を対象とした意味空間作成・統合では,本研究期間を通して,呼吸器,感染症に関する意味的連想検索空間の構築を,相磯貞和研究分担者との共同構築により実施した.
  2. 研究,学問領域創造のためのヒューマン・インタフェース環境の設計,構築(金子郁容,古川康一研究分担者との共同構築により実現
  3. 数値解析の応用による音楽データを対象としたメタデータ自動抽出方式に関する設計,構築(北川高嗣研究分担者との共同構築により実現
  4. 本システムの基本システム・インフラストラクチャ(自立分散ネットワーク,ユビキタスネットワーク,ニューラルコンピューティングを用いた比較実験環境,無線通信ネットワーク)の構築(徳田英幸,武藤 佳恭研究分担者との共同構築により実現
  5. 時間的,空間的計量による知識獲得機能の構築(細川宜秀,吉田尚史研究分担者との共同構築により実現
  6. システムの有効性に関する評価実験,および,時事文書データベースの大規模データベースを対象とした定量的実験(吉田尚史研究分担者との共同実験により実現



独創性・新規性ある方式の考案,および,システム,知識ベース実装

  1. メタデータベース意味的連想検索空間(意味空間)統合方式の考案と実現

    本研究において,独創性,新規性が高く,かつ,実用可能性の高い方式として,"異分野データベース群を対象としたメタデータベース意味的連想検索空間(意味空間)統合方式"を考案し,その方式を実現するシステムを構築した.

    本研究では,独立に構築されている異分野の多次元ベクトル空間を統合し,分野横断的な意味空間を構成する新しい独創的な方式を提案し,実際に環境分野及び医療分野を対象とした意味空間統合を実現した. 提案方式では,異分野に横断的に関連する情報源に,より高い相関を与える多次元ベクトル空間(意味空間)を生成することが可能になり,統合された意味空間を対象とした意味的連想検索機構が実現可能となる.本研究は,今後,異分野において構築されたデータベース群を連携する研究領域の実現に大きく貢献するものと考えられる.本研究成果は,論文(石原冴子, 清木康, 異分野データベース群を対象とした意味的検索空間統合方式とその実現情報処理学会論文誌:データベース,Vol.43,No. SIG5(TOD14), pp.37-53. 2002.)により,平成14年度情報処理学会論文賞に選定された.さらに,本方式に関する次の学術論文を発表した.

  2. 意味スペクトル分析方式の考案と知識ベース構築・学習機能への適用

    本研究においてメタレベル知識ベースシステムの主要な連想検索方式として,多次元ベクトル空間上での意味的連想検索方式を研究対象としてきたが,その多次元ベクトル空間上での知識ベース,データベース構築を行なうための全く新しい方法として,意味スペクトル分析方式を考案し,``意味スペクトル分析方式による知識ベース構築・学習機能''を実現した.データベースシステムを対象とした検索問い合わせを修正させることにより検索精度を向上させる適合性フィードバックの研究が行われてきたが,適合性フィードバックでは, 利用者が検索結果データについて, 適合しているか適合していないかの情報をデータベースシステムにフィードバックする. データベースシステムは利用者からのフィードバック情報に応じて, 対応する適合検索結果データにより近づくように検索問い合わせのベクトルを修正する. これは, 適合データ群を対象として,教師が検索問い合わせのベクトルを学習することに相当する.

    本研究では, 検索対象データをベクトル化した検索対象メタデータベクトルを対象として, そのベクトルが多次元直交ベクトル空間にマッピングされた状況(多次元直交ベクトル空間でのそのベクトルの各軸での値)を表す意味スペクトルという概念を考案し,その意味スペクトルを多次元直交ベクトル空間上の各軸上で修正することにより,検索対象データのメタデータベクトルを適切な位置へ修正,配置することにより,正しい検索対象メタデータベクトルを生成するという,新しいメタデータベクトル生成方式を提案した.

    本方式は, 正しいメタデータベクトル生成のための学習方式としても位置付けられ,ベクトル空間を用いた意味的連想検索の分野におけるメタデータベクトルの検索を対象とした学習機能としてだけでなく,メタデータベクトル生成(すなわち,知識ベースの生成)方式としての学習機能として,この分野に大きく貢献するものと考えられる.本方式を次の学術論文を発表した.

  3. 因果関係計量を行う意味的連想検索方式の考案と実現

    本研究において,独創性,新規性が高く,かつ,実用可能性の高い方式として,"因果関係計量を行う意味的連想検索方式"を考案し,その方式を実現するシステムを構築した.過去のベクトル空間を用いた意味的連想検索システムが,概念間,事象間,オブジェクト間の類似性および等価性の計量を対象としていたのに対し,本研究では,概念間,オブジェクト間の因果関係を計量するベクトル空間の構成方式を提案し,その実用性を示した.この方式により,概念間,事象間,オブジェクト間の因果関係(ある事象の原因となる事象,あるいは,結果として発生する事象)に関連する情報源に高い相関を与える多次元ベクトル空間を生成することが可能になり,ベクトル空間を用いた意味的連想検索の適用可能範囲を飛躍的に拡大することができる.本方式は,ベクトル空間を用いた意味的連想検索システムの応用範囲の拡大に貢献するものと考えられる.本方式を次の学術論文に発表した.

  4. アクティブ・メタデータベースシステムの考案と実現

    本研究では,独立に存在する多様な学問領域の学術情報源を対象とし,モバイル計算機による検索者の時空間状況に関するデータの動的取得,および,解釈によって,検索者の時空間的状況に関連したデータベース検索・統合操作群を自動的,および,連鎖的に実行する機能を有するアクティブ・メタデータベースシステムの方式を提案し,その方式を実現するシステムの開発を行った.この方式により,学術情報源を対象とした動的検索および自動発信を伴う新たな情報獲得環境の実現を可能とした.本方式は,分野横断的な学術情報源の時空間的連結による学術分野の連携に大きく貢献するものと考えられる.

  5. 画像情報メタデータ自動生成拡張方式の考案と実現

    本研究において,独創性,新規性が高く,かつ,実用可能性の高い方式として,"画像情報メタデータベース自動生成拡張方式"を考案し,その方式を実現するシステムを構築した.本研究では,画像特徴量を対象とする類似度計量系(CBIR)を用いて生成したメタデータを再構成することにより,対象画像データに対して適切なメタデータを構成するフィルタ機能を実現するメタデータ自動生成拡張方式に.我々は,既に,あらかじめ既知のサンプル索引群を添付したサンプル画像群をCBIRシステム上のデータベースに格納し,問合せ画像群を当該システムに投入することにより得た画像間類似度を,類似するサンプル画像に対応するサンプル索引に重み付けとして適用することにより,検索対象領域に最適化したメタデータを自動生成する方式を提案した.さらに,2つ以上の互いに相反する概念を表現するメタデータが生成された場合に,新たなメタデータを再構成する処理を導入し,適切なメタデータを自動生成する拡張方式を実現した.実装においては,既存のCBIRシステムをもとにメタデータ自動生成フィルタ拡張方式を実現し,その検索エンジンへの適用可能性を実験により示した.本研究は,今後,画像情報メタデータを簡易かつ直截に構築する研究領域の実現に大きく貢献するものと考えられる.本方式に関する次の学術論文を発表した.



    上記1~5に加え, 主要な研究成果を列挙する.

    (平成13年度:メタレベル知識ベースシステムの機能群およびシステム・アーキテクチャの設計,構築)


  6. マルチリンガル意味的連想検索方式の考案と実現

    多種多様な言語で表現された情報源への多言語によるアクセスを可能とし,それらの情報源のメタレベルでの共有範囲の拡大を実現した.

  7. 人文社会科学分野のデータベース:生活環境分野の意味空間設計,構築 (空間マトリックス709x538,次元数538)

  8. 人文社会科学,自然科学分野統合データベース:環境分野の意味空間設計,構築(空間マトリックス469x425,次元数415)

  9. 自然科学分野のデータベース:エネルギー分野の意味空間設計,構築 (空間マトリックス316x312,次元数302)


    (平成14年度:異種データベース群のメタレベル知識ベースシステムの連結による知識情報獲得を実現する言語体系の設計,構築)


  10. 意味空間評価システムの設計,構築

  11. 人文社会科学分野のデータベース:国際関係分野の意味空間設計,構築 (空間マトリックス718x712,次元数700)

  12. 国際関係分野の体系的な辞書”Dictionary of International Relationship” を対象として意味空間を構築し,その辞書にある専門家の知識を用いた国際関係データベース群への意味的連想検索の実現を可能とした.

  13. 人文社会科学分野のデータベース:国際関係分野と一般辞書の統合意味空間設計,構築 (空間マトリックス3659x2861,次元数2843)

    国際関係分野専門辞書と一般辞書を統合した意味空間を構築し,一般的な語彙から専門的な語彙で記述された情報源への意味的連想検索環境を実現した.この統合方式は,専門的研究分野の知識を持たない利用者が,その研究分野の情報源へのアクセスを要求する場合において,情報源へのアクセス可能性の向上に貢献するものと考えられる.

  14. 自然科学分野のデータベース:医学分野の意味空間設計,構築 (空間マトリックス643x1030,次元数655)

    医学の専門的な内容に関するデータベース群を検索対象とするために,医学用語に関する多様な情報を有するencyclopediaを用いた意味空間生成方式を考案し,その方式を実現した.医学分野の体系的な事典であるHarrison’s Principle of Internal Medicineを対象とした意味空間生成を行った.

  15. WWW上コンテンツ,データベース群を連結するアクティブ・メタデータベースシステムの考案と実現

  16. 音楽データを対象としたメタデータ自動抽出方式の考案と実現